川崎市を拠点にリノベーション、断熱工事、塗装ブランドなどを手掛ける建築不動産会社、株式会社NENGOのコーポレートサイト刷新を担当しました。バリューの再定義、共通言語化など、インナーブランディングにも踏み込んだ取り組みとなりました。
"100年後の街つくり”というミッションを掲げ、そのアプローチとして多岐に渡った事業を行う同社の良さとは何か。ビジョン、バリューとレイヤーに分けた再理解を行うことで、顧客と社員のそれぞれの方面に最適化した情報設計、言語化、課題であったインナーブランディングを強化するパイロットプロジェクトとなりました。
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"100年後の街つくり”という企業ミッションが、時代にもマッチしたとっつきやすさを持つ一方で、やや抽象性もあり、具体的に何ができるの?何をしてくれるの?それゆえ他社よりどこが優れているの?といったベネフィットが分かりづらかったため、それらを適切な粒度と順序で表現すること、社会的意義やビジョンのアウトプットも損なわないこと、これらのバランスをプロジェクトのテーマとしました。
最上位のミッションと、最下部のベネフィットがどのような因果関係で語ることができて、その間にはどんな説明がいくつ必要なのか、これらのロジックを体系的に理解するところから始めたことで、結果的にそのプロセスがインナーブランディングを考える題材となりました。
サイトの情報設計においては、抽象と具体を行き来するような構成になっています。whyやhowを語る文脈で切り替わり、冗長な説明に陥りすぎないリズム感を意識したつくりとなっています。
企業理念やミッション、その先の理想像が前面になったつくりの旧サイトには、「なんかいい会社っぽい」キャッチーさはある反面、事業内容や強みまでを掘り下げて表現できておらず、意図せずして結果的に”外面だけがいい企業サイト”になってしまっているという課題がありました。
しかし実際に会話を重ねていくと、なぜその事業をやっていて、どのように評価されているのか、ミッションとの間にしっかりとした因果関係があることが分かりました。そしてその理解を社長のみならず各事業部リーダーもしっかり持っていることから、各々が理解するための言語とレイヤーがバラバラになってしまっていることが原因であると見当をつけました。
共通言語で理解が進めば、社外へ向けた情報のアウトプットの過不足が理解できるだろうと考え、すべての事業部リーダーと面談をすることから着手しました。
アウトプットの方針を決める前に、まずは自分たちで自分たちを再理解しようと、インナーブランディング的な取り組みを先行して議論を進める中で、それらを体系化して会話がなされてきていなかっただけに、各人の言葉の中にすでにヒントとなるキーワードがありそうなことが分かってきたタイミングがありました。
何らかの新しい言葉に収斂させるよりも、すでに聞いたことのある言葉を主役に据えて体系的に理解をしていく方が腑に落ちやすいだろうと、その中でこの会社を、自分たちを言い得て妙なキーワードが「究極のふつう」という言葉でした。
このキーワードを軸に、ミッション・ビジョン・バリューを明確に切り分けて理解し、さらにその先で何がベネフィットとなっているのかということを、これまでにあった顧客の声を照らし合わせながら、共通言語化を進めていきました。
やや近視眼的だった議論を、インナーブランディングから先行し、ベネフィットに落とし込んでいったことで、サイトにおけるアウトプットや情報のプライオリティを定義する(=アウターブランディング)プロセスへ、スムーズに入っていけたように思います。
コーポレートカラーのライトグレーを基調に、”究極のふつう”の名に負けないプレーンさと、だからといって伝えるべきことは伝えるためにミニマムにしすぎないテイストでまとめています。リノベーション工事においても、ムダな線をつくらない、中長期的に見てムダになりそうなものはなるべく作らない、同社のスタンスと同じチューニングになるように努めました。
抽象と具体のバランスを重視した構成ゆえ、理念やミッションのような抽象的なセクションには、常にすぐ隣に、それを象徴した実績や事業の説明を配置するなど、コーポレートサイトにしてはやや縦長の、階層の浅いつくりのサイトとなっています。