兵庫県播州産地で約100年続く歴史を持つ織物工場会社の、独自技術や個性を発揮できる案件獲得、アパレルメーカーと直接取り引きができる体制づくりなど、次代へ向けた施策として、3代目である30代の職人夫婦と一緒に、提供価値や職人としての想い、ビジョンを整理、定義しました。それらのアウトプットとして自社ブランドのパッケージデザインや、WEBサイトリニューアルを行いました。 また、弊社で運営するガーゼブランドの生地製造を一手に引き受けてくれている職人さんでもあります。
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産地では機屋(はたや)さんと呼ばれる織物工場さんは、産地の慣習として「産元商社」という生地製造をメーカーやブランドから受託するプロセスにおいて、商社的な役割を果たす企業から、下請けの立場として「織り」を請け負うことが多い。工場から見積もりを出すことは基本的になく、彼らが「賃織り」と呼ぶそれだけでは、なかなか企業として業績を伸ばしていくことが難しい。
そんな旧態依然として状況から脱却すべく、その得意分野を活かして他産地からの受託や自社商品も販売するなど、30代の若い職人夫婦がさまざまトライする中で、自分たちの価値は何か、それはどんな人に刺さり、なぜ刺さるのか、そしてどんな仕事をしていきたいか、これらについて会話を重ねた末に、「会話が分かる若い職人」単純ながらこれをテーマとしてコンセプト設計を行いました。
最初の依頼は、端材を生かした手ぬぐいやおくるみなどの自社販売商品の中で、ハンカチにだけパッケージがないから作りたいというものでした。上代価格を考えるとそれほどリッチにはできないけど、ギフト的な使い方もできるものがベストというリクエストを受けて、弊社で形状、仕様の設計、印刷会社さんにて正式な設計とダミーサンプル作成、納得のいく原価/数量となり、すんなりデザイン決定で仕上がりにも満足いただけました。
機屋さんは家内工業であることが多く、夫婦で子育てもしながら同時に通常業務に加えて新しいことへも挑戦しないといけない、でもその時間をなかなかとれない、そんな中でハンカチのパッケージデザインがスムーズに完成したことが、モチベーションアップ、弊社との信頼関係の向上につながり、自ずと会話の機会が増え、コミュニケーションが円滑になったことで、WEBサイトのリニューアルプロジェクトに向けてもスピード感が出ました。
会話の中で偶然見せてもらった、過去に社内の気軽な試作でつくったものだというそのガーゼ生地のサンプルに触れた時、元来からの肌触り商材への関心の高さも相まって並々ならないものを感じて、弊社でそれをブランド化させてもらうことになりました。それほどその彼らのつくるガーゼ生地が格別に気持ちよく、タオルやケットとして売ることが、彼らの生地織りの技術の高さが一般消費者にそのまま伝わりやすい方法に思えたので、職人として満足のいく工賃でによる契約で、以来、たびたびそのガーゼ生地の追加発注をしています。
そのガーゼブランドがどのようにエンドユーザーに受け入れられ、どんなリアクションがされているか、それらを通じて職人としての自己肯定やブランディングの意義、提供価値への理解が深まったように思います。まだまだ小さい事例ですが、生地の発注という実利だけではなく、一般消費者へ向けた物販や産地ブランドのケーススタディとして有意義だったと考えています。
予てから、若いクリエイターによるアパレルブランドとの協力体制や共同開発経験のあった職人さんなので、その実績がまた一つ加わり、提供価値をより強化していく機会にもなりました。
WEBサイトのトップページには、どんな事業者のどんなケースにフィットするかを明示し、簡潔に述べました。その結果、これからブランドをやりたいクリエイターと引き合いがあるなど、少しずつ成果を出しています。
Google Analyticsにも慣れてもらい、ディスクリプションも改善していったことで、実用新案の技術など固有性の高いキーワードで検索順位が向上してきています。
ホタルの名所としても知られる場所に位置する工場の周辺は、緑、川に囲まれた自然豊かな土地です。織物にはきれいな水が欠かせないということで、それらの景色をバックに、職人夫婦家族の等身大の姿や表情を撮影した写真を使用しました。「会話のできる職人」を訴求するために、WEBサイト越しにも顔が見えて、普段の姿が見えることを大事にしました。